こんにちは。
夏になりとても暑い季節がやってきました。
当然汗もたくさんかき、喉も渇いてたくさんの水分を補給しないと
脱水症状を起こして危険です。
ただ、水分だからとなんでもかんでも飲めばいいというわけではありません。
今日はそんなお話をしたいと思います。
清涼飲料水(ジュース)の糖分はすごい
まず、糖尿病専門医でなくても夏の時期に勧めてくるのはお茶や水、あるいはコーヒーなどでしょう。
これらは余計なカロリーや糖質も含まず、カリウムをはじめとするミネラルも補給できるため、糖質制限にかかわらず万人にお勧めできる飲み物です。
ただ、甘くておいしいジュースの方がごくごく飲めてしまいますよね?
だからといってジュースばかり飲んでいると大変なことになります。
その理由はジュースに含まれている糖質。
例えばコカ・コーラの1.5Lペットボトルを一本飲むとどのくらいの砂糖を摂ることになるかご存知ですか?
答えは
169.5グラム
です。
実はこの量ものすごく多いんですよね…
糖質制限では一日に60グラム目安なのでもちろんNG。
先日基準が甘いと指摘した厚生労働省のPFCバランスでも一日200~300グラム推奨とあるので、一日の糖質の大半を占めてしまいます。
「いやいやいや、1.5Lもコーラを飲んだりしないよ」
という意見が聞こえてきそうですが、それは本当でしょうか?
1.5Lと言えば確かに大きなペットボトルが頭に思い浮かぶでしょうが、
では、500mlペットボトル3本といいかえればどうですか?
あるいは350ml缶を4本ほど。
もしくはコップ5杯といえばどうでしょう?
一日を通してコップ5杯分くらいの水分は摂りますよね?
しかも夏の暑い時期ではそれくらいではもちろん収まらないでしょう。
特に太っている人は500mlペットボトルくらい簡単に一気飲みしてしまいます。
飲み物に含まれている糖質というのは意識しないとなかなかに制限することが難しいものです。
その上炭酸飲料などの場合は炭酸の刺激が味覚を鈍らせてしまい、それほど糖質を摂っているという意識にもなかなかなりません。
意識せず清涼飲料水をよく飲んでいる人は気を付けてください。
計算してみるときっとあなたは糖質を摂りすぎているはずです。
そして、そうやって気づかないうちに糖質を飲み物でごくごく摂りすぎてしまっていると恐ろしいことが起きます。
それがペットボトル症候群です。
ペットボトル症候群
ペットボトル症候群とは
正式名称を
ソフトドリンク・ケトアシドーシス
と呼びます。
ソフトドリンクは清涼飲料水、つまりジュースのこと。
ケトアシドーシスとは血液が酸性に傾くことを指します。
発祥のメカニズムですが、
Wikipediaを見ると
高血糖によって引き起こされる喉の渇き(口渇)を、糖分を含有する清涼飲料水の飲用で癒やそうとするが、繰り返しの清涼飲料水の多飲により高血糖を引き起こし、高血糖が膵臓β細胞を疲弊させ、インスリン分泌不全を引き起こして糖が代謝されず、高血糖のままによる喉の渇きは解決せずさらなる高血糖がより喉の渇きを誘発し清涼飲料水の摂取が助長される。この悪循環が糖尿病性ケトアシドーシス(ペットボトル症候群)の発症につながる[3]。
とあります。
要点をまとめると
喉が渇く
↓
清涼飲料水を飲む
↓
清涼飲料水の中の糖分が高血糖を引き起こす
↓
血糖値を下げるためにインスリンをたくさん出す
↓
インスリンを出しすぎて膵臓β細胞が疲れて
インスリンを出せなくなる
↓
インスリンが出せないので高血糖状態が止まらない
↓
止まらないけどまた清涼飲料水を飲むからさらに高血糖状態になる
↓
ペットボトル症候群が発症する
となります。
糖尿病性ケトアシドーシス
ペットボトル症候群とはこのように、糖質を飲み物で摂りすぎた結果
糖尿病性ケトアシドーシス
になってしまう一連の流れを指します。
では、糖尿病性ケトアシドーシスとはなんでしょうか。
糖尿病性ケトアシドーシスのメカニズムですが、
こちらもWikipediaを見てみましょう。
インスリンはブドウ糖の利用を促進するホルモンであるが、1型糖尿病患者ではこれが欠乏しているためにインスリン感受性であるグルコーストランスポーターであるGLUT4を介した肝臓、筋肉などの細胞が血糖を取り込むことが出来ず、脂肪酸からβ酸化によりアセチルCoAを取り出し、TCAサイクルを回すことでエネルギーを調達する。この際、糖尿病や飢餓時のように脂肪酸代謝が亢進する病態では、肝臓のミトコンドリアでアセチルCoAは一部別経路に入り、グルコースの代替品であるケトン体が合成、他の臓器に提供され、この過剰に提供されたケトン体によってアシドーシス(血液が酸性に傾く状態)となる。このようなケトンによるアシドーシスは特にケトアシドーシスと呼ばれ、特に糖尿病によって引き起こされた場合を糖尿病性ケトアシドーシスという。
はい、例によって解説です。
インスリンが働かない
↓
糖が体の中に入っていかず、
体は糖をエネルギー源として使えなくなってしまう
↓
体がエネルギー不足になる
↓
糖の代わりにケトン体を作りだして糖のかわりにする
↓
ただし、ケトン体は作られすぎてしまう
↓
ケトン体が作られすぎてしまうと血液が酸性に傾く
↓
酸性に傾くことによってさまざまな症状が引き起こされる
このような感じで思っていただければOKです。
さて、一番の問題は血液が酸性に傾くことで起きる症状です。
最悪、死ぬ
さて、ここで2つの事例を引用でご紹介します。
まずは一つ目。
2006年7月2日 西日本新聞より転載
■意識不明で救急車
福岡県久留米市に住む15歳の高校1年生が家で倒れ、意識不明になった。救急車で久留米大病院に搬送された。高校生は身長174センチ。体重は100キロで、ピーク時は120キロもあった。普段からペットボトルに入ったジュースなどをよく飲んでいたという。
検査をすると、血糖値が1322(mg/dl)と異常に高く(正常なら空腹時で110mg/dl未満)、脱水症状を起こしていた。血液中の糖分を低下させるホルモン「インスリン」を静脈に注射。約2カ月の入院治療で、血糖値は100mg/dl以下になり、無事退院した。
15歳の高校生がペットボトル症候群と思われる症状で意識不明になったという事例です。
驚くべきは血糖値が1322(mg/dl)という超高血糖状態であり、なおかつかなりの肥満体であったことです。
彼は2カ月の入院生活でインスリン注射を施され無事に通常の値まで血糖値が収まり、退院することが出来ました。
ただ、一つ間違えれば命にかかわっていたであろうことは想像に難くありません。
そして2つ目の事例。
症例は18歳男性, 元々肥満ぎみだった, 1993年春より口渇出現し清涼飲料水を1日に3L以上摂取していた. 10月初めより呼吸困難出現さらに不穏状態となり14日緊急入院BMIは44.8kg/m2と著しい肥満. 血糖1040mg/dl, ケトン体も著しい高値で, 著明な代謝性アシドーシスを呈していた. ICA, IAA, 抗GAD65抗体はいずれも陰性でHLAタイプはIDDM疾患抵抗性であった. インスリン投与や補液施行するも呼吸状態悪化し死亡した. 剖検所見では両側肺動脈本幹より広範な肺動脈血栓症を認め, これが直接死因と考えられた. 膵は全体にランゲルハンス島数の減少と膵島の萎縮を認めたが膵島炎は認めなかった. アルデヒドーフクシン染色では膵島B細胞の著明な脱落を認めた. 腎には軽度の糖尿病性腎症を認めた. いわゆる “ペットボトル症候群” の膵病理所見に関する報告はなく, 貴重な症例と思われた.
こちらの方は18歳の男性。
清涼飲料水を1日に3Lも飲み、こちらも血糖値が1040mg/dlと超高血糖状態で、こちらもかなりの肥満体の方のようでした。
こちらの方は残念ながら亡くなられたようです。
原因は肺動脈に血栓と呼ばれるかたまりが血管をふさいでしまったために呼吸困難に陥り死亡したようです。
このようにペットボトル症候群は死に至る病でもあるのです。
まとめ
ペットボトル症候群になりやすい人には肥満体の方が多く、
またそうでなくても急性のペットボトル症候群になることもあるそうです。
これからの暑い時期、本当に水分が欲しくてほしくて仕方がないとは思いますが、
出来るだけ必ずお茶や水、コーヒーや紅茶などで水分補給をするようにしてください。
コーヒーや紅茶はもちろん無糖で。
スポーツドリンクも清涼飲料水の半分程度の糖質が含まれているので、
飲むとしても1日に1本までとした方がいいでしょう。
飲むなら糖質が含まれていないスポーツドリンクがおすすめです。
本当に飲み物の糖質はなかなか気になりません。
皆さんがペットボトル症候群にならないように祈っています。
本日もご覧いただきありがとうございました。