2019年10月28日更新
こんにちは。
今日は糖尿病と骨粗しょう症についてお話ししていきたいと思います。
以前に糖質制限への批判記事の中で
「糖質制限をすると骨がもろくなり、寝たきりになる」
なんてことを言っていた記事がありましたが、実際は全くの逆です。
糖尿病になることこそ骨粗しょう症リスクを引き上げ、寝たきりになる可能性の方が十分に大きいのです。
お年寄りなどは特に注意です。
糖尿病と骨粗しょう症の関係
早速ですが、糖尿病になることで起こる骨粗しょう症のリスクをご紹介します。
端的にお伝えするとすれば
糖尿病の方とそうでない方を比べた研究では、1型糖尿病の方で3~7倍、2型糖尿病の方で1.3~2.8倍も骨折しやすいということが分かっています。
もう少し具体的なお話をすると、日本骨粗しょう症学会のガイドラインによれば、海外文献のメタアナリシスによって比較したところ、
糖尿病でない人と糖尿病の人で、大腿骨近位部骨折のリスクにおいて
- 1型糖尿病の場合は約6.9倍
- 2型の場合は約1.4倍
に上昇することが判明したとあります。
また、別のメタアナリシスにおいても2型糖尿病の場合通常よりも1.7倍リスクが上がると報告されています。
ちなみに大腿骨近位部とは、下の図のように太ももの付け根辺りの骨のことを言います。
ここの骨折が取り上げられているのは、転んだときに尻もちをついたときなどにこの辺りの骨折がよく見られるためです。
さらに日本での研究では椎体骨折、つまり背骨・脊椎の骨折のリスクにおいて
- 男性で4.7倍
- 女性で1.9倍
に上昇していることが判明しています。
このように糖尿病にかかることで骨粗しょう症、そして骨折のリスクがとても高くなることがわかるかと思います。
糖尿病が関わる骨粗しょう症の原因
では、骨粗しょう症、ひいては骨折に糖尿病がどうリスクを引き上げているのでしょうか。
原因としては以下のようなものが上げられています。
- 糖化(AGEs)による材質特性の劣化
- 骨芽細胞の機能抑制・骨形成低下
- 皮質骨多孔性増大による構造特性の劣化
- 活性型ビタミンDの不足によるカルシウムの吸収不足
ぶっちゃけ意味が分かんないと思います(笑)
ですので、わかりやすく例えると
- 材質特性 → 建物で言う建材
- 構造特性 → 建物で言う骨組み
- カルシウムの吸収不足 → 建材の補給
こうなります。
建材の質が悪くて、しかも不足ぎみで、さらに骨組みも適当に作られた建物ってどう思います?
ということです。
材質がコンクリートから発泡スチロールになって、それも不足気味で、
骨組みも職人じゃなくて素人がつくってぐちゃぐちゃになって、
一応建てられたことは建てれたけど、これいつまでもつの?
ってなりますよね。
答えはいつ倒壊してもおかしくない、です。
何度もご紹介しているAGEsによって骨の質が劣化します。
また、肥満によるインスリン抵抗性が骨芽細胞の活動を抑制してしまい、しっかりと骨を作ってくれなくなります。
最後の多孔性というのは、穴が空いているという意味です、つまりすかすかということですね。これは糖尿病患者の骨を解析した複数の研究で明らかに杏っています。
やはりAGEsによる体の老化、劣化というのは無視できません。
そして肥満によるインスリン抵抗性が骨芽細胞を抑制してしまうというのも気をつけなければいけませんね。
ビタミンDの不足でカルシウムの吸収も十分に行われないので、弱り目に祟り目とはこういうことかなと思います。
救いがどこにもありません(^_^;)
神経、網膜症などで転びやすくもなるのでなお注意
更に糖尿病での骨折リスクは骨の質の低下だけではありません。
- 糖尿病神経障害による転倒
- サルコペニアによる転倒
- 糖尿病網膜症による転倒
こういった転んでしまうリスクも上昇します。
神経障害では単に歩きにくくなり、
サルコペニアとは、高齢による筋力の低下ですが、これによっても足が上がらず段差でつまづいてしまいますし、
網膜症では言わずもがなものが見えにくくなりますから、足元に何があるかわからずつまづいて転んでしまいます。
もっと言えばこれらは併発しますから、同時に体に起こることでリスクはさらに上がります。
そして転ぶだけならまだいいのですが、骨がもろくなっているため、骨折につながり、糖尿病のため完治にも時間がかかりますから筋力も低下します。
そして気づけば本当に寝たきりに…という最悪のシナリオが待っています。
これは誇張ではなく、本当に起きてしまいます。
糖質制限で骨がもろくなって云々・・・なんて寝言よりもはるかに現実的でそれでいて実際に起こっていることなんですよね・・・
骨粗しょう症への対策
糖尿病から来る骨への悪影響は、やはりこれも血糖コントロールをすることで改善がみられることがわかっています。
2型糖尿病患者であっても、Hba1cが7.5%以上の血糖コントロールが不良な群は骨折リスクが1.47倍になっていたが、7.5%以下の血糖コントロールが良好な群においては骨折リスクが上がっていなかったという報告もあります。
これはAGEsによる骨の劣化や、血糖コントロールをしっかりと行うことでインスリン抵抗性の抑制に成功しているため、骨芽細胞の活動がしっかりと行え、通常通り骨の形成が行えたということでしょう。
もちろん、食事療法以外にも運動、トレーニングによって刺激を与えることによって骨は強くなりますから、可能であれば週に1回でもいいので体を動かし、できれば筋力トレーニングも行うと尚よしというところだと思います。
まとめ
高齢者はもともと筋力、骨の質ともに加齢によって劣化しています。
そこに糖尿病による劣化が加わると本当に骨がボロボロになってしまいます。
高齢者で糖尿病の方というのは痩せている方も多く見分けがつきにくく、またご本人も自覚がない場合もあります。
健康な私たちが出来ることは自身の血糖コントロールをしっかりと行うこともそうですが、そういったお年寄りに優しくすることも出来ればしていきたいですね。
皆さんが健康でありますように。
本日もご覧いただきありがとうございました。
本日のデータ引用はこちらからさせていただきました。
http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf