こんにちは。
今日はすごい人を見かけたのでご紹介。
順を追って紹介していきますが、これをこの立場の人が言っていいんかい?
とびっくりしました。
やってみるのもいいかもしれませんが、基本的にはお勧めしません。
さっそく見ていきましょう。
主張者は山梨医科大学名誉教授の佐藤章夫教授
名前で検索すると臨床栄養学士の方が検索に上がってきますが別人です。
こちらの佐藤教授。
(非常に読みにくい…(^_^;))サイトも作っていますし本も出しています。
その名も「米と糖尿病」
佐藤氏の主張は
- 糖質制限は絶食と同じである
- 高糖質食を摂り、運動をすることで糖尿病は改善する
といったものです。
パット見てうそーん・・・ってなるような主張です。
そのほかにも1935年時代は糖質量が今よりも多かったが、糖尿病患者は少なかった、活性酸素が発生するので肝臓がんになりやすい、といった主張もあります・・・
糖質制限は絶食とおなじ?
彼のブログの中で糖質制限を批判すると、
「糖質制限で10キロも減量できた、あなたの主張は間違っている」
という人に対し、
「糖質制限は絶食と同じなんだから体重が減って当たり前」
という風に返しています。
もうここで突っ込みどころ満載です。
糖質制限が絶食と同じって何をどう感じてそうしたのでしょうか?
絶食と同じなら、1型糖尿病患者や、てんかんの治療食としてケトン食を食べている人達は栄養失調でみんな死んでいないとおかしいのでは?(^_^;)
次に肝臓がんになるリスクも同様です。
一応彼は糖質制限とお酒を同時に飲んではいけないという主張を交えて話しています。
確かに私もアルコールの摂りすぎについては何度か記事にさせていただいていますし、実際にアルコールの摂りすぎは糖質制限をするしないに関わらず要注意です。
- アルコールは血糖値を上げたりしませんが下げる邪魔をします
- 少量のお酒なら糖尿病の改善に役立つことが判明。晩酌はお酒1杯まで。
ただ、糖質制限で肝臓がんになったというデータもありませんし、彼の主張のもとは…ラット実験です。
これって前に江部医師、山田医師などの方がすでに否定してますよね。私が糖質制限推奨派だから、というフィルターもあるでしょうが、どちらかというと彼らの主張の方が納得がいきやすいかなと思います。
それに繰り返しますが、それなら1型糖尿病患者やてんかんの治療食を食べている人達の間での死因が普通の人達よりも肝臓がんでの死因の方が多くなければ辻褄が合いません。佐藤氏は何もものを知らないようで、ケトン食などがはるか昔から採用されていたことも知らないようで、20~30年以上糖質制限をした人のデータはない、ということも述べています。
いやいや、なんぼでもおるがな( ^ω^)・・・これで教授って学内政治がお上手なんですかね。
臨床データもない、患者も見たことがない、自身のデータも摂っていない。なーんにもない
でも、いやいや、待て待て。そう頭ごなしになんでもかんでも否定するのはよくない。
佐藤氏は佐藤氏で何かしら自身で研究をしていて、あるいは自身のデータを公開していたりして、何かしらの根拠があってそういっているんじゃないのか?
・・・・
・・・・
ふむ、なるほど確かにそうですね。
ただ、残念ながら佐藤氏は糖尿病患者を診たことがありません。

ついでに言うと人を使った研究もしていません。

ついでについでに言うと自身のデータも8年以上摂っていないようです。

まあ、そうなりますよねー・・・
名誉教授が他分野のことに突っ込んで何のデータもなしにようそんなこと言いよるわ...と私もなりました。
米食えば糖尿病が改善されるなんてそれ試して悪化したらどうするんでしょう?
自己責任とかでつぶす気ですかね?(^_^;)
糖尿病学会の標準治療食の方がまだましに思えるほど稚拙な主張です。
一応、一応主張の根拠はある
ただ、一応ですが彼の根拠として、ヒムワースの実験があります。
1935年に発表された論文で、
- 普通の人の耐糖能に関して
- 脂肪の摂取量と糖尿病に関して
の2つの論点を述べた論文ですが、江部医師によるとすでに後の論文ですでに否定されています。
以下の引用は江部医師のブログからですが、長いので読み飛ばしてもらって構いません。
山梨医科大学名誉教授、佐藤章夫先生が「米と糖尿病」という本を、2010年7月に出版されました。
内容は、基本的に佐藤章夫先生のホームページに記載してあることとほぼ一緒でした。
その中で、「はじめに」 に書いておられることで、かなりの疑問が解けました。
①佐藤先生ご自身が糖尿病である。1989年診断。
②1995年にヒムスワースの論文を発見。
1935年にヒムスワースが発表した、
a)正常人の耐糖能に関する論文
b)糖尿病の疫学の論文。
この2つの論文が、佐藤先生の仮説(高炭水化物食肯定論)の、肝心要な根拠である。
③佐藤先生ご自身の検査データは過去一貫してHbA1c6.5%未満であるが、尿糖陽性の可能性は高い。
①に関して、ご自身が糖尿病なので、薬物に頼らない食事療法に興味を持たれたということで、モチベーションは私と同様ですが、糖質に対する見解が真逆ですね。
私は糖質制限食で、佐藤先生は高糖質食(高炭水化物食)・・・。
これは、私はずっと臨床医で糖尿病患者さんを多数診察していますが、佐藤先生は基礎畑で臨床医ではなく、糖尿病患者さんをほとんど診ておられないという差が大きいと思います。
高雄病院では、1200人以上の糖尿病患者さんに糖質制限食を指導し、顕著な効果を確認しています。入院して糖質制限食を実践され、著明に改善された糖尿病患者さんも400人以上おられて、きっちりデータもあります。
②
a)ヒムスワースの正常人の耐糖能に関する論文。1935年発表。
「健康人に糖質の少ない食事を1週間与えて糖負荷試験を行った。高糖質食を与えたときには耐糖能は正常であったのに、低糖質食によって糖尿病と判定されるほどに耐糖能が悪化した。」
というのが、ヒムスワースが1935年に発表した論文の結論です。
一 方、 1960年、ウィルカーソン(Wilkerson)らが、受刑者を被験者として低糖質食が耐糖能に与える影響を再検討して、糖質の摂取量を1日50グラム に制限しても、耐糖能には大きな影響を及ぼさないという報告を行いました。この報告がNew England Journal of Medicineという影響力の大きな医学誌に掲載されました。
佐藤先生は、「ウィルカーソンは間違っている」と、個人的な見解を述べておられますが、欧米の糖尿病の専門家は、ウィルカーソンの報告を支持しています。
New England Journal of Medicineのような、権威ある医学雑誌においては、まず論文が受理されるまでに、担当編集委員による厳しい審査があります。この第一関門だけでも大変な狭き門です。
また、受理されたとしても、論文として掲載されるまでには、さらに厳密な審査が行われます。
複数の専門家(レフリー)によって、論文の内容に間違いがないか、研究方法に問題はないかなどが徹底的に審査されます。
いったん受理されても、レフリーにより掲載不可になることもあるし、大改訂後掲載可というような判定もあります。
この非常に厳しい第二関門を通過して、初めて医学雑誌に論文として掲載されるわけです。
つまり、一流の医学雑誌に掲載された論文には、当該の一流の複数の専門家のお墨付き・保証があるわけです。
(製薬メーカーなどの利権が絡まない論文は、信用していいと思います。)
ですから、単なる学会報告で論文になってない研究と、一流医学雑誌に論文が掲載された研究では、信頼度にかなりの差があるわけです。
ましてや、佐藤章夫先生の個人的見解と、ニューイングランド・ジャーナルの審査を行った、複数の欧米の専門家の見識と、どちらが信頼度が高いかは、明らかです。
b)ヒムスワースの糖尿病の疫学の論文。1935年発表。
「脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物では、これと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられる」
というのがヒムスワースの結論です。
これに対して、日本の糖尿病医療を長くリードされてきた後藤由夫先生☆☆☆が、ヒムスワース(Himsworth)の誤解を明快に指摘しておられます。
<後藤由夫 私の糖尿病50年 -糖尿病医療の歩み->
43. 糖尿病の増減
http://dm-medical.net/14/000242.php
2. 脂肪摂取と糖尿病
「ロンドンのHimsworth(1935、1949年)は各国の糖尿病の死亡率と国民の栄養素摂取量との関係が図2のように、脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物ではこれと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられると報告した。この成績をもとにHimsworthは脂肪摂取が糖尿病の増加と関係すると結論した。筆者はこれに興味を抱き、追試して同様な成績を得たが、次に粗死亡率ではなく訂正死亡率について関係を求めた。その結果は図3のように相関関係は認められなかった。このことから、Himsworthがみていたのは脂肪摂取量の多い国は豊かで糖尿病罹病年齢まで生存するのに対し、経済的に遅れている国では脂肪摂取量が少なく、安価な炭水化物をエネルギー源として、しかも糖尿病罹病年齢まで生存する者は少なく、若年期に死亡する者が多いことをみているにすぎない、と理解された。このことから脂肪摂取が糖尿病の発症と関係するという説は否定された。動物に大量の脂肪を与える実験も行われたが、これによって糖尿病が現れたという報告もなかった。」
このように、佐藤章夫先生が、「高炭水化物食肯定論」の最大の根拠としておられるヒムスワースの二つの論文そのものが、医学的には既に否定されているわけです。
ヒムスワースの論文は、1935年発表です。その後、医学も疫学も、多大な進歩を遂げました。ヒムスワース論文は、75年前の過去の遺物に過ぎません。
端的にまとめると
- 耐糖能異常が見られた → もっと信用のある論文で否定されてるよ
- 糖質が多い方が糖尿病少ない → データのもとになった国は貧しくて、確かに安い炭水化物ばっかり食べてるけど、その人たちは糖尿病になる前に死んでるから、「糖尿病患者が少ない」のは当たり前だよね!!
ってな感じ。
まだもう少しありますが、要するにヒムワースの論文って穴だらけで使いもんにならないよね、無視していいよこんなのってことです。まあ、私が先日とりあげた記事で知らず私もこのヒムワースの論文否定してたのはちょっと驚きですが(^_^;)
まあ、普通に考えればわかるよねーってことをわざわざ論文で間違える辺り頭のいい人はどこかずれているなーと思います。
〇 糖質はもっととっても大丈夫?糖質制限なんかしなくてもいい?ちょっとおかしな糖質推進派の一部の理由
まとめ
佐藤氏自身は山登りなどかなりハードな運動をしているようですから、それが続いている間は確かに血糖コントロールはよくなっているかもしれません。ですが、それをやめた瞬間、佐藤氏は転げ落ちるように糖尿病が加速するでしょう。
それは以前取り上げた力士の糖尿病と同じく、運動をやめることによって筋肉が使っていた糖質がそのまんま体の負担となってのしかかるからです。
食後に運動をすると血糖コントロールが良好になるということはよく知られていますが、逆に言えば運動をしなければ血糖コントロールは良好にならないということ。
佐藤氏が今どうなっているかは知りませんが、いつか彼自身の体を持って間違いを理解する日が来ると思います。
皆さんの糖質制限がうまくいきますように
本日もご覧いただきありがとうございました。