こんにちは。
あなたに教えたいミネラルの基礎知識、今日はクロムです。
クロムとは? 役割は?
クロムは色々と種類がありますが、人体に存在するクロムは三価クロムと言って微量ミネラルのひとつで、体内にはおよそ2㎎ほど存在します。
クロムはその体内での役割から、別名を「代謝のミネラル」と言われています。
金属メッキやステンレスの材料などに使われているようなクロムは「酸化クロム」「六価クロム」などといい、腐食性、耐久性にすぐれ、始皇帝の兵馬俑に収められていた青銅の武器や防具にメッキが施されており、発掘時に2000年以上経っていたにも拘わらず、さびた痕跡がなかったというエピソードがあるくらいです。
ただし、酸化クロムや六価クロムには強い毒性があり、体内にはいると有害ですのでクロムが塵に混ざっているようなところで仕事をしていると皮膚炎や肺がんの発がん性のリスクが高まりますし、土壌汚染の原因物質にもなります。
また、クロムはタバコにも含まれていることが知られており、タバコの発がん性のリスクにクロムが関係していることもわかっています。
クロムの役割
クロムの役割には次のようなものがあります。
- 糖代謝
- 脂質代謝
- たんぱく質代謝
- コレステロール代謝
- 結合組織代謝
- インスリン作用の強化
先ほども書いた通り「代謝のミネラル」という別名があり、それは各種栄養素の代謝にかかわっていることからそういう名前が付けられています。
また、インスリンの作用を強化する機能も持つことから、2型糖尿病に有効であるとの研究結果もいくつかあるようで、
1997年に中国で行われたプラセボ対照試験の結果、2型糖尿病の治療にクロム補給が有益である可能性が示された(23)。180人の試験参加者が、プラセボまたは200μg/日および1,000μg/日のピコリン酸クロムを服用した。4ヶ月後、プラセボ(偽薬)を服用した人よりも1,000μg/日の補給をした人の方が血糖値が15~19%低下した。200μg/日の服用をした人はプラセボを服用した人と比べて血糖値に大きな差がなかった。ピコリン酸クロムを200μg/日または1,000μg/日服用した人のインスリン濃度は低かった。長期間の血糖調整を測定するグリコヘモグロビン濃度もクロム補給をしたグループの方が低く、1,000μg/日の服用をしたグループでは特にそうであった。
といったようにクロムを服用したグループとそうでないグループではクロムをサプリメントで補給したグループの方が血糖値が15~19%低下、HbA1cも数値は書いていませんがクロムを補給したグループの方が低かったという結果が出ています。
引用元ではアメリカ人とは肥満率の違いや人種の違いからアメリカ人に応用できるかはわからないとしていますが、逆に私たち日本人は同じ黄色人種であるため、この研究結果は大いに役立つものだと思っています。
2型糖尿病患者はそうでない人よりもクロムの排出率が高いことも知られていることから、クロムを補給することは2型糖尿病の寛解に役立つのではないかと思います。
2型糖尿病の方はもちろん医師との相談は必要だとは思いますが、クロムの補給での耐糖能の強化を図れるかもしれません。
クロムを補給するときですが、クロムは吸収率が非常に低く、食べてもほとんどが体外に排出されます。
ただ、その際にビタミンC、ナイアシンと同時摂取すると吸収率があがりますので、ビタミンCとナイアシン、特にビタミンCと一緒に多く摂ることが望ましいでしょう。
クロムの必要量、クロム豊富な食材
クロムの一日に必要な量はおよそ10㎍(マイクログラム)
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢等 | 目安量 | 目安量 |
0~5(月) | 0.8 | 0.8 |
6~11(月) | 1.0 | 1.0 |
1~2(歳) | - | - |
3~5(歳) | - | - |
6~7(歳) | - | - |
8~9(歳) | - | - |
10~11(歳) | - | - |
12~14(歳) | - | - |
15~17(歳) | - | - |
18~29(歳) | 10 | 10 |
30~49(歳) | 10 | 10 |
50~69(歳) | 10 | 10 |
70以上(歳) | 10 | 10 |
妊婦 | 10 | |
授乳婦 | 10 |
平均摂取量はわかりませんが、クロムは海藻類に多く含まれていて日本人は海藻をよく食べることから不足の心配はほとんどありません。
クロムを豊富に含む食材としては
- レバー
- アナゴ
- 海苔類
- アサリ
- ハマグリ
- ホタテ
- カツオ
- ししゃも
- 牛乳
- プロセスチーズ
- パルメザンチーズ
- 落花生
- きな粉
- ココア
- 松の実
など、結構多くのものに含まれており、特に海藻類や貝類、レバーやチーズなどに多く含まれています。
逆に精製された炭水化物はクロムがその精製過程でほとんどが失われるといわれていて、小麦粉の場合98%、白米の場合は92%のクロムが精製される過程で失われるということですので、炭水化物ばかりを食べている人はもちろん肥満にも注意ですが、クロム不足にも注意した方がよいでしょう。
クロムが不足した際の症状
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 腎尿細管障害
- 肝障害
- 造血障害
- 中枢神経障害
クロムは日本人の場合不足することはそうそうありませんが、万一不足すると以下のようなことが起こります。
- 体重減少
- 疲労感
- 錯乱
- 協調運動障害
- 血液中の糖分(グルコース)に対する反応低下
クロムが不足すると糖質を始めとした各種栄養素の利用効率が低下するため、エネルギー補給がうまくいかず、疲れやすい、体重が減少するなどの症状が現れます。
また、インスリンの機能も低下することから血糖値の上昇、それに伴う糖尿病リスクも上がると思っていいでしょう。
クロムが不足するかも、と言う人は砂糖や果物を食べすぎている人。
ショ糖や果糖といった単糖を多く含む食品はクロムが少ないだけでなく、クロムの損失を促進することすらわかってきており、それらの食べ物をよく摂っていると、クロムの排出が促されてしまいますから、糖化の可能性もさることながら、クロムが不足してしまう可能性も考慮した方が良いでしょう。
クロムを過剰摂取した際の症状
三価クロムの過剰摂取による健康被害の報告はほとんどありません。
それに耐用上限も定められていません。
ですが、サプリメントによる長期間の過剰摂取を行うと腎臓に障害が出ると言う報告があり、
ピコリン酸クロムとしてクロムを6週間にわたって600μg/日摂取した5ヶ月後に、腎不全が報告された(34)。また、ピコリン酸クロムとしてクロムを4~5ヶ月間1,200μg~2,400μg/日使用した後に、腎不全と肝機能障害が報告された(35)。さらに、24才の健康な成人男性がピコリン酸クロムを含むサプリメントを2週間摂取したところ、可逆性の急性腎不全を発症したと報告された(36)。腎臓や肝臓に既存の疾患がある個人は副作用のリスクが高まるかもしれないので、サプリメントでのクロムの摂取を限定すべきである(1)。
といった報告もあり、耐容上限は設定されていないものの、サプリメントでの摂取であれば1000㎍までくらいが実質的な上限ではないかと個人的には感じています。
また、他にも長期間にわたる過剰摂取では
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 腎尿細管障害
- 肝障害
- 造血障害
- 中枢神経障害
が起こる可能性があると示唆されていますので、あまりの大量摂取は現実的ではないと思っておきましょう。
まとめ
それではクロムのまとめになります。
分類 | 微量ミネラル |
体の中の役割 |
|
一日の推奨量(成人) | 10㎍(マイクログラム) |
一日の上限量(成人) | なし |
不足した際の症状 |
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過剰摂取にした際の症状 |
|
備考 |
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クロムの役割は代謝。
インスリンの機能強化もそうですが、脂質やタンパク質の代謝にも関わっていることからやはり微量とは言え必須のミネラル。
あまり意識することはありませんが、糖尿病の方は一度医師との相談は必要かもしれませんが試してみる価値はありそうです。
皆さんが健康でありますように。
本日もご覧いただきありがとうございました。